ミステリの十戒と建築設計の十戒


ミステリー小説における

ロナルド・ノックスの十戒

建築設計における

私の十戒

(1)犯人は小説の最初から登場している人物でなければならない。又、読者が疑うことの出来ないような人物が犯人であってはならない。(例、物語の記述者が犯人などは不可)

(1)建築家は初めての打ち合わせから、本人が登場せねばならない。又、「設計のせの字」も知らない営業マンが、それらしく振舞ってはならない。
(例、打ち合わせに一度も現れずに図面を書くのは不可)
(2)探偵方法に超自然の力を用いてはならない。
(例、神の力や読心術など)

(2)設計方法に超自然の方法を用いてはならない。
(例、怪しげな方位版を持ち出したり、お香を炊いたりしては成らない)

(3)秘密の通路や秘密の部屋を用いてはならない。

(3)設計する建物に秘密の抜け穴や、隠し部屋を設けてはならない

(4)科学上未確定の毒物や、非常に難しい科学的説明が必要な毒物を用いてはならない。

(4)力学上、解析不能な構造体や、普通の人には難解な設計理論で施主を煙に巻いてはならない。

(5)中華人を登場させてはならない。(西洋人にとって、中華人は何となく超自然、超合理的な感じを与えるから)

(5)まるで国籍不明の人物のような風貌で、施主にハッタリをかましてはいけない。(そうでなくても施主にとっては、謎の人物なのだから)
(6)偶然の発見や探偵の直感によって事件を解決してはならない。

(6)偶然の発見や建築家の直感のみによって、施主を論破するような真似をしてはいけない。

(7)探偵自身が犯人であってはならない。

(7)建築家自身が欠陥建物を助長するような真似をしてはいけない。

(8)読者の知らない手掛かりによって解決してはならない。

(8)施主が知らない情報を図面に盛り込み、勝手な建物を作ってはいけない。

(9)ワトスン役は彼自身の判断を、余すことなく読者に知らせるべきである。又、ワトスン役は一般読者より、少しだけ智力の鈍い人物が適当である。

(9)設計する際にアシスタントを使う事は構わないが、間違ってもアシスタントをメインにしてはいけない。まして、施主よりも知識の無いアシスタントを使う事は許されない。

(10)双生児や変装による二人一役は、予め読者に双生児の存在を知らせ、又は変装者が役者などの前歴を持っていることを知らせた上でなければ用いては成らない。

(10)施工者が手抜き・欠陥工事をする事を承知していながら、賄賂が欲しいがために、その業者を斡旋するような破廉恥な真似をしては成らない。どうしても懇意の施工者を押す場合には、その理由を明確にせねばならない。

■ご注意■

ミステリーマニアの方なら、一度ぐらいは耳にされた事が有ると思います「ロナルド・ノックスの十戒」をパロってみました。でも、意外と核心は突いていると思います。
「ノックスの十戒」を、ご存知でなかった建築家の皆様、目くじらをお立てになりませんように。