『双頭の悪魔』読了 - 47

双頭の悪魔 (創元推理文庫)
双頭の悪魔 (創元推理文庫)
有栖川 有栖
人里離れた山中にある、芸術家たちが集まる木更村。その村にマリアが入ったまま、連絡が途絶えてしまう。マリアの父から依頼を受けた江神たち英都大学推理研の一行は、村への侵入を図るが、折からの大雨の影響で、村へ続く唯一の橋が落ちてしまう。木更村に残された江神とマリア、橋の手前の夏森村に残されたアリスたち。川で分断された二つの村で、それぞれが殺人事件に巻き込まれてしまう。学生アリスシリーズ第三弾。
この本が発刊されたのは92年、今から15年前になります。私は発刊当事に読んでいるので再読でしたが、それでもやはり面白かった。さすが有栖川さんの、代表作だけはあります。まず橋の両側で二つの殺人事件が同時進行するのですが、それぞれのディティールが、きちんと計算されています。また3つの「読者への挑戦」が仕組まれていますが、情報が上手に提示され、かつ緻密に隠されているので、アンフェア感が無い。「本格推理とは、こう言う作品です」の、お手本みたいな一作。
さて、これで『女王国の城』への予習・復習は終りました。
よーーーし、いつでも来ーーーい!!!(←間違った気合の入れ方)
いや、時間が有るから『孤島パズル』も、もう一度読んでおこうかなぁ・・・。

コメント

  1. みけねこ より:

    本当に、綺麗なミステリですよね。
    有栖川先生の作品はどれも、何度再読してもやっぱり楽しい、と常々思っています。また、素人が生意気な言い方かもしれませんが、文章がとても上品で美しいので、読後にギスギスした後味を残さないんですよね。余談ですが、有栖川作品のジュブナイル「虹果て村の秘密」を友人の小3になる娘さんに貸したところ、それまで苦手だった読書感想文を見違える程上手に書いた、という後日談を聞きました。子ども達のお手本になるくらい、美文なんですね。
    ところで、私も予習というか復習というか、『川に死体のある風景』所収の「桜川のオフィーリア」を再読中です。

  2. 探偵長 より:

    推理小説と言うのは、ひょっとすると独立したジャンルであって、「文学」とは違う物ではないかと感じる事があります。つまり角張った文章でも、「ミステリーだからあり」と、で許されるような雰囲気を感じる事があるのです。でも有栖川さんの作品は、文章に丸みがあって、事件が起きなくても成立しそうな気がします。と書くと、作家にとっては複雑な心境なのかもしれませんが?(笑)
    私が感じる「丸み」が、みけねこさんが仰る「上品」と、同じ意味なのかもしれませんね。
    お子さんの琴線に響く本だったのでしょうね。そう言う本との出会いは、とても大切ですよね。