悪魔の百唇譜 (角川文庫―金田一耕助ファイル)
横溝 正史
昭和35年6月22日午前4時、世田谷区成城町の路上に放置された車のトランクから、女性死体が発見された。死因は両刃のナイフで心臓を一突き。そして死体の傍には、同じナイフで貫かれたと思える、ハートのクイーンのカードが残されていた。事件を担当する捜査一課の等々力警部から、強引に借り出された金田一耕介が、連続する奇怪な殺人事件の謎を解き明かす。
やっぱり上手いよね~。最近、いろんな本を読んでいて、気になるのが最初の一ページ目。本全体の書き始めと言うか、事件導入部への序章と言うか、とにかくそれらは最初の一行に掛かっていると言っても過言ではないと思っている。本当に何気ない書き出しでも、その書き出しで舞台の空気全部を表す作品も有るし、最後の一行に繋がる複線を孕んでいる場合もある。
本作の書き出しは、今年の天気が気象庁の予報に反し、ぐずついた毎日で不快指数80と言う、人の精神状態までもを狂わせる陽気・・・と言うもの。それだけで横溝ワールドに引きずり込むのは、お見事としか言いようが無い。やっぱりドロドロも好きだ~。ちなみに書名の「百唇譜」が、何のことだか分からなかったが、読んでみれば納得。こう言う名前の付け方も好きです。暫くは、積読本の横溝作品読破月間にするかなぁ・・・。
コメント
横溝正史作品は癖になります。本人が「七五調でも書ける」と言っていたくらいで、文章のリズムが快いことも一因でしょう。『獄門島』などは完璧に近い探偵小説だと思いますが、ユーモアあふれる短編もあれば「鬼火」のような鬼気迫る耽美系もあり、芸域が広いですよね。百唇譜ってどういう意味でしたっけ。読み返さないといけないようです。
確かに文体のリズムの良さは抜群ですね。七五調でも書けると言われたら、それはもう無敵でしょう。リズムだけで読まされてしまいすよね。本棚には『迷路荘の惨劇』やら『白と黒』などが残っており、さてどれを読もうか迷います。
「百唇譜」とは、百の唇の譜面です。それ以上はネタに近付きますのでご容赦を。