『ボロボロになった人へ』読了 - 59

ボロボロになった人へ (幻冬舎文庫 り 1-3)
ボロボロになった人へ (幻冬舎文庫 り 1-3)
リリー・フランキー

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『東京タワー』で有名な、あるいは『水10』で有名な、リリーさんのブラックでエロでクールな短編集。リリーさんの風貌から、穏やかで温和で紳士然とイメージする女性は多いと思う。まして『東京タワー』での優しい孝行息子と言うイメージが被れば、その好印象は揺るがないかもしれない。が、リリーさんの真髄は、ここにある。


例えば、日常に嫌気がさした一人の男が、現実から逃避するように南へ南へと下って行く。ようやく辿り付いた南海の孤島は、生気の無い顔をした男ばかり。だが島に付いた夜、男の前に現れた美少女は、今までに体験したことも無い性の快感を感じさせてくれると言う「おさびし島」。男は少女に恋をするが、少女には隠された真実があり、それを知った男は嘆き悲しみ怒るのだが、やがて男も。顰蹙を買うかもしれないが、でもある部分は間違いなく心理。
また若いと言うだけで、目的も無く、生きる意味さえ見出せない三人の男の前に現れたのは、早朝のゴミ捨て場に、ゴミまみれで寝ていた一人の美少女。この美少女との出会いがきっかけで、三人の男はそれぞれに変わり始める。特に刺激的なスイッチが押された訳でもなく、有り得ない幸運が舞い込んだ訳でも無いが、心の底で変わりたいと願う人にとって、そのチャンスは身近な所にあると感じさせる。クールで、ある意味ハードボイルドとさえ感じてしまう。こう言う作品、けっこう好きです。
さて、今年最後の一冊になるであろう次は、一体何を読みましょうか。「乱歩賞」を受賞された『沈底魚』も、本棚に積まれたままなのが気になるのですが、さて・・・。
さてと言えば、私も書かなければいけなかった記録が、まだ書けてなかったりして・・・(笑)←笑ってごまかすタイプ スマソ