セリヌンティウスの舟 (光文社文庫 い 35-4)
石持浅海
荒れ狂う波間に漂流する6人のダイバー。彼らは死の恐怖と戦いながら、互いの体を支え、まるで一つの船のようになり、その命を共有した。九死に一生を得、無事に生還した彼らは、その体験から、6人が運命共同体のような繋がりを持つ。ところがそのうちの一人が、事もあろうに服毒自殺を図り、自らの命を絶ってしまった。警察は自殺と判断したが、残された5人はその死に違和感を覚え、自殺の真意を図ろうとする。
セリヌンティウスとは、太宰の『走れメロス』に登場する友人の名前。メロスの代わりに人質となり、メロスが約束の時間までに戻って来られなければ、その命を差し出す友人の名がセリヌンティウス。
本書は一つの小さな疑問から検証を重ね、否定しては、また次の疑問を検証すると言う形で、5人の論理的思考を辿る。正直言えば、途中論理のループが長過ぎて中だるみする感が無くも無いが、最後のたたみ掛けはお見事。こう言う作品は好きです。
バークリーの『毒入りチョコレート』を、チョッと思い出しました。