床下仙人 (祥伝社文庫)
原 宏一
「家の中に誰か居る?」。
郊外に買った念願のマイホームに、引っ越した早々に妻が奇妙なことを言い出した。妻の為、家族の為と頑張り、ようやく手に入れたマイホームだと言うのに、そこに居るのは幽霊?それとも? 表題作の『床下仙人』をはじめとする全五話の短編集。
原さんの本は初めて読みましたが、シニカルでシュールな内容に、笑って良いんだか、考えるべきなのか悩んでしまいました。例えば派遣社員のシステムや、その形態が何の違和感も無く受け入れられている社会に対するアンチ・テーゼ的な『派遣社長』の中では、社員ではなく社長を派遣することで起こる珍事件を描いています。でも内容は確かに核心を突いているし、現実に有りそうで笑えない。
『シューシャイン・ギャング』は、クールで広義で解釈すればハードボイルド。これもリアリティがあり、デビュー当時の石田衣良さんみたいな匂いがして、個人的には結構好きでした。
なおこの本を読んで、自分の家の床下が気になった方のために補足すれば、心配しなくても大丈夫だと思いますよ(笑)