『閉鎖病棟』 読了-24

閉鎖病棟 (新潮文庫)
閉鎖病棟 (新潮文庫)
帚木 蓬生
日常から隔離したイメージを、多くの人が持つであろう精神病院。家族や世間からも疎ましく思われながらも、それぞれが懸命に生きようとしている。だがそんな病院内で殺人事件が起きてしまった。山本周五郎賞受賞作。
本の中ほどまでは淡々と過ぎていく日常だったのに、気が付けば大きなうねりが起こり始めていた。そのうねりは徐々に大きくなり、しかも一つのうねりではなく、二つ、三つと違ううねりが立ち始める。その一つ一つのうねりに、心を揺さぶられた。
泣いては落ち着き、これでうねりは治まったかと油断していると、また次のうねりが現れ、また泣かされる。なんか最近、本読んで泣くことが増えたかも? 年のせいだろうか?
また、あとがきでも触れられていたが、精神病院に対する悪しき印象や、知らぬことに対する恐怖心みたいなものが、ひょっとすると、ただの「負の刷り込みの産物」でしかないのかもしれないとも思わされる。街中で擦れ違う見知らぬ誰かの方が、ひょっとするとよほど狂気を内包しているのかもしれないと。
「優しさ」とは何か、そして本当の意味での優しさを持っているのは「誰か」。
そんな事を考えた読後です。良かった。