福家警部補の挨拶 (創元推理文庫)
身長152cm、縁なしのメガネをかけ、前髪を眉の上で切り揃えたショーヘア、それが主人公・福家警部補。その一見幼く見える容姿が犯人の油断を誘うが、卓越した注意力と推理の妙は名探偵の域に達し、二晩や三晩寝なくとも平気なタフさは、ハードボイルドな探偵のそれに匹敵する。その上、アルコールにめっぽう強く、酒好きと豪語する男と飲み比べても、ダウンする男に対して「これ以上飲むと酔ってしまいます」と言い残して立ち去る姿は、まさにハードボイルドだど。
その福家警部を主人公にした本書は、倒叙形式で書かれた本格ミステリー。つまり先に犯人が分かっていて、その犯人をいかに追い詰めていくかと言う展開。「刑事コロンボ」や「古畑任三郎」が、これにあたる。本書には中編が四篇収められているが、『オッカムの剃刀』は秀逸。これは引退した科警研のOBで、複顔術の権威相手。他にも本をこよなく愛す図書館の女性館長や女優、造り酒屋の社長を相手に、知的対決を挑む。
後味の良いミステリで、サラッとした読み心地はフルーティな味わい。それはまるで、新緑の風が頬を撫ぜるかのようで、それでいて喉越しに柔らかく、舌にふくよかな丸みを残し心地よい余韻を楽しむ事が出来ます。どうぞ一度お試しあれ。
以上、お酒の紹介風に感想を書いてみました(笑)
コメント
初めまして。突然、お邪魔致します。「福家警部補の挨拶」を読んであまりに楽しかったので、他の方の感想も拝見しようとネット内をウロウロしていて、このページにたどり着きました。
感想の文章があまりにもステキで心打たれました。「後味良く、サラッとフルーティ」というのは、まさに、その通りですね。永作博美さんのファンであることも含めて、とっても共感しました。TBさせていただきます。
また、ご自身でも本を出されていらっしゃるのですね。「密室入門」、大変、面白そうなので、近く、拝読させていただきます!
おりおん。さん、はじめまして。
それに、あけましておめでとうございます。
レスが遅くなり、失礼いたしました。
『福家警部補の挨拶』は、楽しく読ませていただきました。これまでにも倒叙形式のミステリは読みましたが、本作はコロンボ的な雰囲気と、キャラクターの魅力が相まって、作品全体の雰囲気を柔らかく仕上げられている点が好きでした。
その福家警部補を永作さんが演じるのですから、永作さん好きとしては、期待値が上がるのは仕方の無いことですよね。ご覧になられましたか?
それから拙著『犯行現場の作り方』、有栖川有栖さんとの共著『密室入門!』なども出版させていただいております。琴線に触れるようでしたら、是非、お手に取ってみてくださいね。