上りの長いエスカレーターに乗っている、年の頃なら60代後半のご婦人。
体が御不自由なのか、それとも疲れていらっしゃったのかは分からないが、エスカレーターのベルトを右手で掴み、体を預けるように立っている。関西ではエスカレーターの左側を空け、右に立つのが普通らしいが、関東ではその逆。立っている人は左側に立ち、右側を空ける習慣がある。何で関東と関西で違うのかには諸説あるが、エレベーター・エスカレーターが最初に導入されたのは関西だし、外国では左を空ける事が多いと聞くので、ひょっとすると関西の方が正しいのかもしれないが、その話はまたの機会に置いておく。
駅は混雑している時間でもなく、エスカレーターに乗っている人も、まばらな状態。そこに下からエスカレーターの右側を、ガンガンと上ってくるビジネスマンが、ひとり。私の横を、鞄をぶつけながら追い越していく。
少し上の右側に立っているご婦人には、一体どうするのだろうと思いながら見ていると、まるでサッカーの選手が相手をかわすように、体を入れ替えてご婦人の左側を追い抜いて行ったのだ。もう少しで上りきる所まで来ていると言うのに、よほど急いでいたに違いない。ただしその光景を見ていて、少し危険な気がしたのです。
だいたい右手でベルトを掴んでいる年配者の場合、たいてい足腰が弱っている方が多いのです。右手が利き腕の方の場合、左手で手摺に掴まり体を預けるよりも、力の入る右手で掴まり、体を預けた方が楽だからです。
急いでいる時は仕方ないと思うし、ご婦人にぶつかった訳でもないので、良いといえば良いのですが、師走の慌しさの中に、優しさや思いやりまで置き忘れてくるのは、如何なものかなぁ~と、思ったのでした。