箱男 (新潮文庫)
段ボール箱を頭からスッポリと被り、四角く切り取った小さな窓から、ジッと外の世界を覗き見る、それが箱男。社会と言う枠組みから外れ、そこに存在していても無視される異端の物。人であり人でなく、物であり物でない、その生き方を選んだ男。箱男と看護士の女、そして偽箱男の三人の世界が、白昼夢のように倒錯するミステリ。
この本を初めて読んだのは、たぶん15歳の頃だったと思います。叙述あり、メタありで、とにかくグチャグチャな世界に、何がなんだかサッパリ分かりませんでした。ちょうど同じ頃に読んだ『ドグラ・マグラ』と共に、意味が分からなかった本として記憶に残っています。
ですがあれから30年!そこはそれ、やっぱり大人になった訳ですから、子供の頃とは違います。今度は、チョッとだけ分かりました(笑) でも書き手は誰? 死んだのは誰? 女、何処行った? と、こんがらがる事は相変わらず。 この手の作品が苦手な方なら、吐き気を催すかもしれません。でもその醜く歪んだ世界観こそが、本書の根っ子。
作品の評価としては高いそうですが、個人的には苦手です。ただし導入部の強引に引き摺り込む筆圧の高さは、最近の作品には無い重さがあると思いました。この重さと暗く陰鬱とした閉塞感は、ミステリの要素として大好きです。