『建築は詩―建築家・吉村順三のことば一〇〇』 読了-20

建築は詩―建築家・吉村順三のことば一〇〇
建築は詩―建築家・吉村順三のことば一〇〇
建築家・吉村順三氏が、生前に各誌各方面で語った、建築へのスタンスや考え方をまとめた物。それはまるで詩集のようで、氏のスケッチと共に心に沁みる言葉ばかり。建築を志す学生や、これから家を建てようとする人にとって、とても大切な事が沢山綴られている一冊です。
中に、「ヒューマンな町」と言う一節があって、そこには隣近所の人に対する思い遣りや配慮が必要と説かれています。それは簡単な言葉で表すと「エチケット」。そんなエチケットが有ったから、隣近所と気持ちの良い付き合いが出来る。人の事なんか考えないで、勝手気ままに建てると言う事は、そう言う気持ちが無いからだと語る氏の潔い言葉に、今更ながらに目が覚める思いがしました。
昨今の風潮として、「自分の土地、自分の建物だから法を犯さなければ何をしても良い」と言う風潮が有りますが、それを自制できる建築主の認識や、諌める事が出来る建築家あるいは施工者が少なくなってきているのは、エチケットの欠落なのでしょう。建築思想とか都市の景観等と言う大袈裟な事ではなく、共に住むと言う認識と、共に住むためのエチケットの欠落。それに尽きると思います。
良い本です・・・と言うか、凄い本です。