『競作五十円玉二十枚の謎』 読了-25

少し前に、『ニッポン硬貨の謎 エラリー・クイーン最後の事件』を読んだので、こちらもこの機会に読んでみました。
池袋にある某大型書店の1階レジに、毎週土曜の夕方になると、五十円硬貨二十枚を握り締めた男が、千円札に両替して欲しいと訪れる。本を買うわけでもなく、何かに追われるように、両替だけを済ますと、そそくさと帰っていく男の目的は。大量の五十円硬貨を持っている理由は。
作家の若竹七海さんが、学生時代に遭遇した不思議な体験をテーマに、本格ミステリ作家と、公募した一般の方が書かれた解決編の共著。こういう形の本は、結構珍しいですね。
実はこの本、正直言えば、あまり期待してしませんでした。ですから文庫化されるズッと以前、今から10年以上前に発刊されたときにも、触手は伸びなかったのです。理由は簡単、リアルな現実の謎に対して、誰がどう推理しても、それは事実の解明ではなく、推理でしかないと思ったから。つまり「腑に落ちる」事が無いと思っていたのです。
ミステリにおける謎は、犯人(作家)が生み出し、探偵が解明する。場合によっては、犯人自らが「その通りです」と説明するので、「腑に落ちる」とか「腑に落ちない」なんて悩む必要がありません。それが唯一無二の答えなのですから。
もっとも造詣の深いミステリマニアの方の中には、「説得力が無い」とか「別の人物でも犯人になり得た」と、とかく厳しい批評される方が、いらっしゃらなくも無いですが、それはその方の主観ですよね。作家の描いた世界では、結論は作品中で帰結している訳なので、納得して終了~と思っいます。
でもこの作品を読んでみて、時に想像力は事実を超えるかもしれないと、感じました。
文章の上手下手で読ませるのではなく、謎に対する解釈の妙で読ませる作品が多く、想像する楽しさを実感した一冊でした。
いや~、食わず嫌いは良くないですね(笑)