買ってから、一度しか履いていない靴がある。
つま先の細いデザインで、一度履いたら足が痛くなってしまったので、そのまま箱に戻し、下駄箱の上の棚に入れたまま忘れていた靴だった。
下駄箱を片付けた時に見つけたのだが、このまま履かないのも勿体無いので、近くの靴屋さんに持って行き、ダメ元で幅を広げて貰えるかを聞いてみた。靴屋さん、しばし靴を眺め、「分かりました、お預かりします」との事。
そのままにしておいたら二度と履かない靴が、ひょっとしたら履けるようになるかもしれない。
ダメ元で頼んだのだが、やっぱり気に入って買った靴だから、履けるようになって帰って来たら嬉しい。これもある意味で再生、つまりリニューアル。
放っておいたら使わない物を、使えるように直してもらう。
仕事のリフォーム・リノベーションも同じこと。
大切な家、思い出のある場所を、壊してしまうのではなく再生する。
それは造ってくれた人に対しても優しい。
仕舞われたまま履かれなかった靴は、再生されずに朽ちていくだけの家に似ている。
家も「お直し」感覚で、使い続けられると嬉しい。
家に心があるのなら、きっとそう言うに違いない。