読みたい本を探すとき、本のあらすじを読んだり、好きな作家だから大丈夫だろうと信じて読み始めることがあります。 書評サイトで人気が高かったり、書店のPOPに釣られて買うこともあるでしょう。最近では「ジャケ買い」なんて言葉もあるぐらいですから、人が本を選ぶ時の基準はそれぞれで、ひょっとすると意外な選択基準があるかもしれません。
そんな選択基準の中でも、割と高いランクにくるのが「書名」ではないでしょうか。
書名を見た瞬間に、「この本を買おう!」と、それこそ衝動買いさせられてしまう作品も数多くあります。
書名から想像できる物語の展開、あるいは「何があるのだろう?」と想像力を掻き立てられるのだと思いますが、その期待を裏切らない上手な、あるいは絶妙と言っても良いような書名もあり、そんな作品には、読後感嘆させられてしまう事もしばしば。本書『アヒルと鴨のコインロッカー』も、その一つ。
読み始める時には書名の意味に悩んだのですが、それも忘れるくらいの引力で引き込まれます。
そして読み終えた瞬間に、書名の意味が、そして何を書きたかったのかが理解できました。
まさに、スッと落ちた感じで。
物語は、東北の大学に通うために引っ越してきた主人公が、引越し当日にアパートの隣の部屋に住む美青年に「一緒に古本屋を襲わないか」と持ちかけられるところから始まります。彼の狙いは一冊の広辞苑だと言われ、誘いを断りながらも誘いの意図に興味を持ち始めた主人公は、気が付けばモデルガン片手に古本屋の裏口を見張る羽目になっていた―。
導入部の魅力と謎に、気持ち良く引き釣り込まれていける展開ですが、ただ一つ、「これから不幸が訪れますよ~」というフラグが、どうにもこうにもやり切れない。それはこの手の不幸が嫌いだから。
ミステリが好きなのだから、「血がドバー」とか「首の無い死体」とか、それは全然平気なのですが、この手の悪、言ってみれば「負のオーラ全開の外道」と「正義の心に溢れる非力な善人」みたいな構図が好きではないと言う意味で、作品自体はとても魅力的でした。
伊坂作品、作家買いしても大丈夫な作家さんなのかもしれませんね。
コメント
こんにちは。
この作品、私はどうしてもどうしても駄目でした~★
そうなんですよ、探偵長様の仰る、「不幸フラグ」が全く受け付けなくて。
私も「血がドバー」だの「首無の死体」だの、「手足がバラバラ」でも全然オッケーなんですが、こういう最後のカタルシスのためにそこに至るまでを下り坂を転げ落ちるような感覚で読まなければいけないというのは、読書の悦楽ではなくて拷問でしかないです。
私は何度も何度もトライしたあげく、結局読破するのを断念しました。なので結末を知りません(笑)
伊坂作品ではデビュー作の『オーデュボンの祈り』と『チルドレン』が、未だに一番好きです。
『ゴールデンスランバー』にも唸りましたが、あれで燃え尽きたのか次の『モダンタイムス』は積読中です(苦笑)
みけねこさん、こんにちは。
みけねこさんも同じでしたか。
柔らかめに書いていますが、実はこの手の展開が、とても辛かったです。
頁を捲るたびに、息苦しくなるような気分で、ともすると読み飛ばしてしまいたい衝動に駆られました(笑)
みけねこさんには及びませんが、私も伊坂さんは好きですので、これからも読み続けますけどね。