『殺すものと殺されるもの』 読了- 5


ヘレン・マクロイの最高傑作と称される作品が、東京創元社から復刊されました。
評価の高さを期待しつつ読み始めたのですが、なるほど、斬新な手法で描かれたミステリでした。
ただし、この作品は1957年に出版されたもので、私が生まれるよりも前に書かれた物。その部分を若干考慮しなければならないような気もします。
大学で心理学を教えていたハリー・ディーンの元に、突如叔父の莫大な遺産が転がり込みます。
驚きのあまり外に飛び出したハリーは、氷に足を滑らせ怪我をしてしまいます。その事故を機に、ハリーは大学を辞め、故郷のヴァージニアに帰ることにしました。そこにはかつて愛した女性が、今は人妻となり、母となって暮らしていたのでした。彼女に未練を残したハリーの周辺に、なにやら不可解な出来事が起こり始めます。免許書が消え、差出人不明の手紙が届き、怪しげな徘徊者が出没します。そして遂に痛ましい事件が起きてしまうのです―

ミステリとは本来、読み手に心理的なプレッシャーを与えるような作品の方が、楽しいと思います。
そのプレッシャーがどんな種別のものを好むのかは、読み手の趣味の問題。
個人的には暗く陰湿な雰囲気を漂わせた作品が好きなので、そういう意味では面白かったのですが、現代の作品を読み慣れている方には、少々異論がありそうな気もします。
トリックを大切にしたミステリとは、かくも難しいものかと、考えてしまった一冊です。