3階にある事務所の外を、黒いつむじ風が、一つ、二つ、三つと吹き抜けていく。
鴉だ。
この時期の彼らは繁殖期にあたり、木の上やビルの屋上に巣を作り卵を産む。
抱卵している頃から、彼らは群れて行動する。
その方が卵や雛を守りやすいからだろう。
そのあたりの母性・父性は、他の生物同様に持っているらしい。
いや、母性・父性と言う点においては、鴉をはじめとする他の生き物のほうが、人より優れているかもしれないと思わせる事件も多い。少なくても鴉で言えば雛の時期にあたる乳飲み子を絞め殺したり、熱いライターを肌に押し当てたりするような残虐な行為を、鴉はしない。
この時期の鴉は攻撃的で、場合によっては人を襲う事がある。
それはテリトリーに侵入した人間に対しての、威嚇行為の場合もある。
卵や雛を守ろうとする行動らしい。
ともすれば不快な気分にさえ聞こえる鴉の鳴き声も、ひょっとすると彼らの愛情表現かもしれない。
黒い疾風が、また一つ横切っていく朝です。