「悪魔の実在を否定することは、聖書そのものを否定することである」
これは、悪魔学の権威・バルドゥッチ牧師の言葉として書かれています。
エクソシストと聞くと、私の世代では、リンダ・ブレアが主演した映画「エクソシスト」を思い出すことでしょう。悪魔に取り憑かれた主人公の女の子が宙に浮かんだり、首が360度廻ったり、ブリッジの姿勢で階段を駆け下りたりした姿は、今でも強烈に覚えています。
ですが本書のイメージを、そこから連想するのは間違いです。
悪魔が憑くから悪魔祓いが必要となる訳ですが、この悪魔が取り憑くという現象は、圧倒的にキリスト教圏での事例が多く、日本で同じような現象に遭遇すると、それは「狐憑き」と呼ばれるのかもしれません。つまり悪魔の存在とは、宗教観と密接な繋がりがあると書かれています。
読み進めていくと、「なるほど、そりゃあそうだ!」と、膝を打ちます。
例えば聖書を通じて神を信じている人にとって、突然の不幸や事故、病気に掛かってしまった場合、
「こんなに信仰しているのに、なぜ神は私に不幸を与えるのか?」と疑問が生じてくるのです。
信仰心が高ければ高いほど、身に降りかかる不幸に納得がいかなくなるわけです。
そこで必要になるのが、神以外に不幸を与える別の存在。それが堕天使、つまり悪魔なのです。
他にもカルト教団の教義の共通性や、その危険性にも触れていて、かなり面白かったです。
悪魔祓いの儀式などに関しては触れられていませんので、そちらに興味がある方には向かないかもしれません。蒸し暑い夏の夜、読んでいて少しだけ背筋が涼しくなります。冷房嫌いの方にも、お薦めの一冊です。