悪魔黙示録「新青年」一九三八―探偵小説暗黒の時代へ』ミステリ文学資料館編/読了
昭和初期、夜はまだ漆黒の闇が包み、人はその闇に畏怖の念を感じていた頃の小説。この頃はまだ「ミステリ」などとは呼ばず、さりとて「探偵小説」と呼ばれることも無い、そんなジャンルの小説がたくさん存在していた。殺人事件も起きなければ、警察も登場しない。ましてや名探偵など、影も形も無いのだが、そんな小説の中に静かな恐怖が隠されている。そんな短編集――。
いや、文句無く面白い。私、やっぱりこの時代の作品や作風が大好きだーーー!
表題作の赤沼三郎『悪魔黙示録』よりも、城昌幸の『猟奇商人』のような、殺人も起きないのに怖い作品は、この時代ならではこその魅力。
だいたいミステリって、欧米のスプラッタホラー映画のような感じじゃダメなわけで、出来れば国内の四谷怪談のような怖さが欲しいと思っている。怨念が、情念が、執念が読み手の心にまとわり付き、一人で読んでいるのが怖くなるような世界を描き出す。そう言う作品が大好きなのです。
渡辺啓助の『薔薇悪魔の話』や、横溝正史の『一週間』などは凄く新鮮に読めたし、木々高太郎の『永遠の女囚』なんて、うかうかしていると、どこが怖いのかさえ分からないような作品なのだが、読み返すと確かに情念が、もの凄く怖い。こういうのって癖になる。
ただし普段本を読まない方には、少し読みにくいかもしれませんので、ご注意あれ。
天工舎一級建築事務所
神奈川県小田原市荻窪314正和ビルみなみ302
E-mail toshio0223@k-tantei.com
ブログランキングに参加しています。宜しければ、応援の一押しをお願い致します。
コメント
探偵長様、こんにちは。
ま、また面白そうな本を……!
第二次大戦前って特に地方は夜暗かったんですよね、今ほど街灯もなく、第一みんな夜更かしなんてしなかったでしょうし(笑)
欧米のように視覚的にドキッとするスプラッタは、明るい場所じゃないと何が何だかわかりませんものねw
その分、心理的にじわじわくるホラー描写が上手いのは、日本人の資質のひとつなんですね。
今度読んでみます!
……さていつになることやら……(汗)
みけねんさん、こんばんは。
ミステリー文学資料館が編集しているアンソロジーは、まずハズレが無いと思います。
勿論、好みの問題はありますが、ミステリ=謎=恐怖の繋がり方は、いつの時代でも普遍ですからね。
最近の作品を読み続けた後に、気分を変えたい時があれば、是非どうぞ。