『青い密室』 鮎川哲也著/読了


名探偵・星影龍三が活躍する鮎川哲也氏の密室物の短編集。
表題作の『青い密室』をはじめ、『白い密室』『悪魔はここに』『朱の絶筆』と、全八作品が収められています。装丁は、本書も京極夏彦氏のデザインです。

全てが面白かった!
と書いてしまうと、とても軽薄なので、ここは一つ視点を変えた感想を書きましょう。
興味深かったのは、『薔薇荘殺人事件』でした。
神奈川県の真鶴町に建つ薔薇荘で、不可思議な密室殺人が起きるのですが、事件の謎にも増して気になるのが、この薔薇荘という建物は、かの小栗虫太郎氏の長編小説『黒死館殺人事件』の舞台となった黒死館を、そっくりそのまま模倣して建てられているという事でした。
思わず、「マジか!」と叫んでしまいました。
だって私、このての奇怪な館には目が無いので(笑)
ですが黒死館は、私には無理です。
私の長い人生において、『黒死館殺人事件』は、三度ほど読みましたが、いつ読んでも、その建物の全容がイメージ出来たためしが無いのですから。
それなのに、それをあっさりと完全コピーして建てててしまうなんて、一体何処の建築家の設計によるものなのか? また、建築様式さえ分からぬ奇怪で、かつ荘厳な建物を工事した建設会社は何処の会社だろうか?――それが気になって気になって。
今度、真鶴に薔薇荘を探しに行こうかと思ったほどです(笑)
全然話は飛びますが、小田原・真鶴界隈の方で、「薔薇荘」と聞いてピーンと来た方が、少なからず居るのでは無いでしょうか。私が思い出したのは、今から30年近く前に、湯河原にあった本格中華料理店「薔薇荘」のことでした。あそこの肉旨煮飯は絶品でしたからねぇ・・・・・・。
ちなみに、そんな『薔薇荘殺人事件』を読んでも、黒死館のイメージは掴めませんでした。
きっとこれをイメージすることは、私には生涯無理なのでしょう。
とまぁ、いろんな感じで楽しめた一冊です。
読めて満足です。
天工舎一級建築事務所
神奈川県小田原市荻窪314正和ビルみなみ302
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