英都大学推理小説研究会に入部した主人公・有栖川有栖が、日常の中で様々な謎に遭遇する。
名探偵の誉れ高い江神部長をはじめ、織田、望月の両先輩たちと共に、謎の解明に知恵を絞る。
学生アリスシリーズとしては初の短編集で、紅一点のマリアが入部するきっかけとなった『蕩尽に関する一考察』を含む、全九話を収録しています。
既読の作品もありましたが、新たに加筆されていたようで、初見のように楽しく拝読しました。
ミステリが好きな人が、ミステリを好きな人のために書いた本――そんな気がします。
でもミステリを読んだ事がない人が読んでも、面白いと思います。なぜなら本作品では、誰も人が死なず、誰も殺意を持っていないからです。勿論、血生臭くもありませんし、警察すら登場しません。
どの作品も好きですが、中でも『四分間では短すぎる』は、琴線を揺らしました。
公衆電話で偶然に隣の人の話す、「四分間しかないので急いで。靴も忘れず。いや、Aから先です」と言う会話が気になり、その意味を探ろうとする話。そして驚きのオチに繋げていくのですが、とても楽しい。ハリイ・ケメルマンの『9マイルは遠すぎる』を思い出しますが、作中でも、その作品に触れています。
ミステリって面白いな~と、思わせる一冊でした。
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