ゲーム製作会社に勤務する島汐路は会社を辞め、故郷の愛媛県の早瀬町に帰ろうとしていた。そんな時、会社の同僚が汐路の目の前で、奇妙な死に方をする。また故郷の早瀬町でも、中学生が同級生を猟銃で射殺するというショッキングな事件が起きていた。二つの事件に共通する「ケイジロウ」というキーワードに気付いた汐路は、事件の真相を探ろうと動き出すのだが。
中盤過ぎまで、物語がどの方向に進んでいくのかが、全く分からなかった。
その意味では、とても面白い。
また、読み終えれば、長過ぎた前フリには大きな意味があり、単なる前フリでは無かったことに気が付くのだが、こちらが迷走している間は本題とは違う事に興味を持って行かれ、恐怖に心酔することが出来なかったことが、ちょっと残念。でも、流石は横溝正史ミステリ大賞受賞作という作品です。
話の本筋とは全く関係無いのですが、読み終えてあらためて感じたことが一つある。
裏表紙に書かれたあらすじには、現代社会の「歪み」を描く―と書かれているだけで、それ以上のことは書かれていない。
だが表紙には和室が大きく歪んだ映像が描かれ、帯には「貴方の家の歪みは大丈夫ですか?」の文字が書かれているのは如何なものか?
「チラッと見せてますが、誰も気付かないでしょ?へへへ」的な、編集サイドのお楽しみかもしれないが、読者に拠っては本作の肝の部分が推測できてしまうからだ。こういうチラ見せは要らない。
ミステリが好きだからこそ、純粋に楽しみたいと思ってしまうのです。
もっとも活字離れが激しいと言われる昨今、売るためには目を惹くキャッチ・コピーが必要なことも理解します。ただ、ミステリ好きとしては、なんか、モヤっとするんですよねぇ・・・・・・。