『新幹線をつくる』 早田森 著/読了


少し前に読んだニュースに、こんな記事が載っていました。
新幹線の運転士が、まだ走り出す前の運転席で、うっかり小銭をばら撒いてしまったそうです。飛び散った小銭を拾い集めたのですが、10円玉が一枚、どうしても見付からない。たぶん運転席の何処か隙間に、紛れ込んだに違いない。悩んだ挙句、新幹線の運転車両を丸ごと交換し、定刻よりだいぶ遅れて出発したと言うものでした。
時速270km/hで走る新幹線は、世界の中でも類を見ないほど安全で、かつ運行時刻に乱れの無い輸送車両です。1964年に運航を開始して以来、たった一度の事故さえ起こしていないのですから、その安全性能の高さは奇跡と言っても過言ではないほど。
ではなぜそれほどまでに、安全に走行することが出来るのか? ふだん、安全に走ることが当たり前だと思っている私でしたが、本書を読んで、なるほどと納得しました。

安全は、車両を製造する「職人」の技術力の高さと、その完成度の高い車両を完璧に乗りこなす運転技術の高さ。そして互いが互いを意識し、更に高みを目指そうとする向上心。日本の新幹線とは、それらから出来ているから、安全で安心なんだと分かります。
本書では、車両を製造するための技術的なことも分かりやすく書かれていますが、それよりも技術を駆使する「職人=人」に、スポットが当たっています。

昨今、日本経済の低迷とか、日本企業の衰退と言う言葉を耳にしますが、本書を読むと、「日本はまだまだ大丈夫!」と、感じることさえ出来ます。物を作ることの大変さと、飽くなき努力、向上心は、まだまだ何処にも負けていない! と。
勉強になった一冊でした。