『菩提樹荘の殺人』 有栖川有栖 著/読了


有栖川さんの新作『菩提樹荘の殺人』を、拝読。
本書は表題作の『菩提樹荘の殺人』を、はじめとする『アポロンのナイフ』『雛人形を笑え』『探偵、青の時代』の中篇4作が収録されています。
コテコテの謎解き物ではありませんし、難解な密室も出てきません。
著者があとがきで語るように、テーマは「若さ」。
その若さに内包される、ある種の幼さや冷たさが垣間見えるミステリです。
表題作の『菩提樹荘の殺人』は、理解しがたい状況に対して、納得できるオチと展開が綺麗です。
また『アポロンのナイフ』のような、絶妙な結びの作品は好きです。
『雛人形を笑え』では、頭の中で『踊る人形』がグルグルしてしまい、少しだけ本編に集中出来ませんでした(笑) ですが取り分け面白かったのは、『探偵、青の時代』。
火村の大学生時代の話ですが、日常の中で覚える違和感を一つ一つ繋ぎ合わせ、その違和感の元へ辿りつく話の観察力は、まるで和製ホームズのよう。密室も殺人事件も起きませんが、こういう作品を読めるのは、とても楽しかったです。
秋の夜長に是非。

そうそう! 
巻末の著者プロフィール欄に代表作が数冊取り上げられていたのですが、小説以外にもエッセイ集や、安井俊夫との対談本『密室入門』もあります――と、書かれていたことには驚きました。
それに、少し照れました。
今夜は、お月見会に行って来ます。
お土産には、花より団子・・・・・・より酒! って感じです。
では、どちら様も良い週末を。