この作品は昨年の秋に購入していましたが、ずっと本棚に置いたままでした。「残虐なシーンが多い」と、聞いたことを真に受けたからです。なんせ痛そうなのが苦手なので……。でも人様の評価に踊らされたことを、反省しました。面白いと感じて購入したならば、そこは信じて読むべきです。
噂に違わず、大変面白うございました。
パリの街中で一人の若い女が、屈強な男に誘拐されてしまいます。目撃者の拙い証言を頼りに、警察は捜査に乗り出すのですが、誘拐された女の素性も分からなければ、誘拐した男の身元や、その目的さえ分かりません。捜査陣は焦りの色を見せながらも、地道な捜査から少しずつ謎が解き明かされていきます。この誘拐事件は、ほんの序章にしか過ぎなかったのです――。
ミステリの書評や感想は、ネタバレになると困るので書き難いのですが、本書も同じ理由から書けることがほとんどありません。とにかく場面転換が上手いことと、読み手をハラハラさせる緊張感が凄い。それにテンポが良い。誘拐事件は、誘拐された女の視点と、捜査する警察の視点が交互に書かれていくのですが、その視点が何度となく重なっては離れて行く様子が秀逸です。
まぁ、私ごときが彼是書いても興が醒めるので、どうか本書をお読みください。
449頁の作品が、アッと言う間に通り過ぎていきますので。
ルメートルの作品は、もう一冊『死のドレスを花婿に』が翻訳されています。
4月には文庫版が出版される予定なので、今は予約を入れて楽しみに待っているところです。
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