『11の物語』パトリシア・ハイスミス著

『かたつむり観察者』をはじめとした、11のショート・ストーリーが収録された短編集。ハイスミスと言えば、アラン・ドロンが主演し大ヒットした映画「太陽がいっぱい」の、原作本を書いたイギリスの女性作家。小説と推理小説の中間領域を自在に描く作家として有名ですが、私はお初でした。ミステリというほど、謎が盛りだくさんの小説ではありませんが、それでも普通の小説とは少し違う。どこかロアルド・ダールのような雰囲気もあるし、星新一的な匂いもする感じとでも言いましょうか、とにかく独特の世界観がある作品ばかりでした。

なかでも『アフトン夫人の優雅な生活』が、好きでした。精神分析医のバウアー博士の診療所を、アフトン夫人と名乗る女性が訪れます。主人の様子が変だと訴えるアフトン夫人は、バウアー博士に治療を申し出るのですが、主人を診療所に連れて来ることは出来ないので、私に対処法や気を付ける点を教えてほしいと訴えます。本人を連れて来なさいと言っても、頑なにそれを拒む夫人。仕方なくアフトン夫妻の元を訪ねることにした博士だったのですが—―

あとがきに、何度も読むことでさらなる発見がある一冊と、書かれているので、いつの日か、また読んでみましょう。

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