私は将棋が指せません。駒を並べることことは出来ますし、矢倉や穴熊、振り飛車といった戦法を書いた将棋の本を読んだこともあります。勿論、駒の動かし方だって分かります。それでも、やっぱり将棋は指せません。たぶんゲームとして奥が深すぎて難しいから。間違っても、「ちょっと暇潰しに将棋を指そう」――なんてことは、絶対にないです。私にとって将棋とは、かなり遠い所にある物なのです。
それほど縁遠い将棋ですが、棋士の羽生さんの名前や凄さは知っています。米永さんの御名前だって分かります。少し変わっている橋本さんが、面白いことだって知っています。そして将棋の漫画だって読みます。今なら『3月のライオン』ですね。そんな私が棋士・村山聖の『聖(さとし)の青春』を読んだのは、やはり村山さんの名前を存じ上げていたから。
漫画『月下の棋士』に登場した<村森聖>も、『3月のライオン』に登場する<二海堂晴信>だって、村山さんがモデルだと言われています。重い病気を患いながら、棋士としての頂点・名人位を目指して戦い続け、若干二十九歳という若さで亡くなった、村山さんの生き様を読んでみたいと思ったのです。
物心付いた時から重い病気を患い、そして同時に将棋で強くなり、名人になることだけを目標に生きた村山さんの生き様は、やはり凄かったです。一つの物にこだわり極めようとする方が、文字通り「命を賭して」という生き様に、泣けた一冊でした。