『狩人の悪夢』有栖川有栖著/読了 

ホラー小説の大家・白布施正都との対談を切っ掛けに、白布施の自邸に招兼ねることになった推理小説作家の有栖川。白布施の家には、眠ると必ず悪夢を見ると言われる部屋があり、興味を抱いて出掛けるのだが、そこで不可解な殺人事件に巻き込まれてしまう。火村シリーズの長編で、クローズド・サークル物。

閉ざされた空間の中で、限られた容疑者。散りばめられた数々のアイテム。テンポ良く進む会話の中から、読者が推理する楽しさを十分に感じることが出来る作品で、その世界はミステリなのに、なぜか優しい。シリーズもすでに長く、火村とアリスの関係が成熟しきったように感じていたが、本作ではさらにアリスの存在意義が進化している。

犯罪を「狩る」という冷静で冷酷な探究心を持つ火村と、犯罪者と言う人間に対する怒りと哀しみを持つアリス。その二者の絶妙なバランスで転がる会話とテンポの良さが、本作の肝であり見せ場でもある。

楽しませていただきました。

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