15年前、当時大学生だった姉と友人の男性が、部屋で殺された。逮捕されたのは、被害者二人の友人でもある大学生の男。裁判で死刑判決が言い渡されるのだが、彼の父である元弁護士の八木沼悦史は息子の冤罪を訴え、一人戦い続けていた。そんな父親の面会を、なぜか頑なに拒絶する息子。そして死刑執行の気配だけが、日に日に高まっていく。そんな時に、姉を殺された妹の菜摘の元に、真犯人を名乗る人物・メロスから電話が入る。自分が自首する代わりに、その代償として五千万円を要求するという物だった――。横溝正史大賞受賞作の社会派ミステリ。
「社会派ミステリ」と謳われているのは、死刑制度の是非がテーマとして描かれているから。テーマが重い分の難解さはありますが、文章が上手なので読み易い。とは言え死刑制度の是非論は、被害者感情も含めて、一人一人が文字通り死ぬ思いで考えなければ、答えに辿り着かないものかもしれません。考えさせられる読後でした。
「雪冤 せつえん」とは、無実の罪をそそぎ、身の潔白を明かすこと。