レオパレス 基準法違反の謎

レオパレスが、206棟のアパートで建築基準法違反があったことを認めて、謝罪会見を行った。違反内容の主な内容としては、隣接する住戸との間に設ける界壁の未設置、あるいは適切な位置に設けられておらず、隙間等があったという物。

界壁とは、隣の部屋から火事が出た時に、隣接する部屋に延焼しないように、住戸の境には一定の防火基準の壁を室内から屋根まで設ける必要があり、その壁のことを界壁と呼ぶ。界壁は天井の上にも施され、屋根裏まで隙間なく設けられている。だから一昔前のアパートのように、自分の部屋の天井裏から隣の住戸の天井裏へ行く事など、今は出来なくなっている。今の時代に乱歩が執筆活動をしていたら、名作『屋根裏の散歩者』は、誕生することは無かった。

話が反れたが、この記事を読んで疑問が二つある。一つは工事の中間あるいは完了検査で、なぜに界壁の未設置が発見されなかったのかということ。界壁の適切な設置は、共同住宅(アパートの意味)という建物用途の工事において、最重要チェック項目の一つなので、この項目を見落とすということが、とても不思議。もう一つは、なぜ今、総建物数3.7万棟のアパート全てを見直すという、大規模な検査が行われなければならなかったのかということ。

一つ目の疑問に関して言えば、界壁がダメなら、他の部分が安全に施工されている事にも不安が残る。謝罪会見ではマニュアルと下請け業者の図面に食い違いがあり、その為に起こった工事ミスと言われていたが、通常そんなミスは考えられない。理由はいろいろと挙げられるが、例えば現場を統括して管理する現場監督が存在していれば、下請けの間違いは日々、是正される筈。またこれだけの数の建物を工事しているならば、下請けをはじめとする施工者全員が、その内容には熟知していた筈だと思うから。また法令に則った検査機関の検査では、界壁の適切な施工は目視、あるいは写真で確認することが基本。この検査員が、界壁の未施工を承知で検査を合格させたわけではないとすると、それぞれの建物ごとに虚偽の報告や写真が提出されていたと考えられる。それが206棟と言う数字になると、これはもう会社全体のコンプライアンス感覚の麻痺としか思えない。

二つ目の疑問の、なぜ今、これだけ大規模な調査が行われたのか? なにかの切っ掛けがあったと思われるが、その切っ掛けは謝罪会見では触れられていない。ひょっとすると、この切っ掛けこそが大事な気がするのだが、そこは不明なままだ。

3.7万棟のうちの206棟は、比率で言えば確かに少ないのかもしれない。だが206棟の建物には、数百人の人が住んでいることも確かだ。その数百人の命を守る建物の最低基準としての基準法、それを企業の倫理や馴れ、油断だけで軽んじてはいけないのですよ。早急な改善を期待します。