『犯人に告ぐ2 闇の蜃気楼 上・下』雫井脩介 著/読了

日本中を震撼させた連続児童殺害事件、通称「バットマン事件」を見事解決させてから半年が経ち、事件を解決に導いた巻島警視は特殊詐欺集団摘発に尽力していた。そんな中、振り込め詐欺の指南役・淡野は、振り込め詐欺集団の一味だった砂山兄弟に、日本史上類の無い新たな形の誘拐計画を持ち掛ける。「チョイチョイと4,5千万を稼いで、直ぐに陽の目の当たる世界へ戻っていく」、そんな感覚でのめり込んでいく犯罪への誘い。そして警察を翻弄する誘拐犯たちの巧妙な計画が始まった—

「警察小説」であり「誘拐小説」でもある本作は、振り込め詐欺の手口が上手に誘拐へと転用されている、ある意味「特殊詐欺小説」と、言っても良いでしょう。現代の日本では「振り込め詐欺」の被害が、年間400億円を超えると言われており、額だけで言えば一つのビジネスと言っても良い額になっている。これだけ注意喚起され、事件に巻き込まれないようにと啓発啓蒙活動が進む中で、これだけの被害が生まれているということは、その手口がいかに巧妙であり狡猾であるかを想像するに容易い。その犯罪手口を誘拐に転用しているのだから、これは性質が悪く、しかも心理的に危うい。犯人、人質、警察、その誰が味方で誰が敵か、誰を信じて良いのかが分からない。そんな心理描写が巧みに描かれた作品でした。

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本作は勿論面白かったのですが、前作の『犯人に告ぐ』の方が、個人的には好き。理由は単純で、「劇場型犯罪」を描いた作品が好きだから。

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ちなみにもう直ぐ封切りされる話題の映画『検察側の罪人』も、雫井さんの作品ですが、あの作品を読んだときにも感じたのですが、途中で少しダレるような気がします。ダレると言う叱られるもしれませんが、もたつくと言うか、ペースダウンする瞬間があるというか、そんな気がします。まっ、それでも最後まで読ませてしまう筆圧の高さは、お見事ですが。