ミステリー文学資料館が編集した、古書を題材にしたミステリーを集めた短編集の2巻目。乱歩をはじめ山田風太郎や泡坂妻夫、中井英夫、逢坂剛など、計12名の作家の作品が掲載されている。中でも坂口安吾の名には引かれた。どれも皆秀作揃いな上に、短編集なのでさらりと読めてしまう所が良い。
坂口安吾の作品は『アンゴウ」。時代は戦後まもなくの頃、ふらりと立ち寄った神田の古書店で、一冊の本を手に取るところから始まるお話。過去に自分も所蔵していた太田亮氏の著書『日本上代に於ける社会組織の研究』という本に目が留まる。過去に自分も同じ本を所蔵していたが、戦火で蔵書を焼き払ってしまい、懐かしさから手に取ったのだが、扉に所蔵者の印が押してあることに気付く。そしてその印は間違いなく自分の友人の物。購入して持ち帰るのだが、その本には不可解な用箋が挟まれており、そこには奇妙な数字の羅列が記載されていた――
暗号物のミステリと言えば、古くは『踊る人形』『黄金虫』などがあり、近年では『涙香迷宮』や『英国庭園の謎』なんて作品もそうですね。ミステリ好きの中でも、暗号物が好きな方は多いと思います。私の場合は、暗号の妙に驚いたり楽しんだりすると言うよりも、その謎を解いていく思考の過程が好きなので、その部分を丁寧に書いている作品が好きです。けして天才のひらめきや、過程の全てをすっ飛ばして、答えだけが分かってしまうような作品は、どんなに暗号で巧みに出来ていても、あまり好きではありません。
『アンゴウ』は、過程の説明は勿論ですが、一捻り半、いや二捻りぐらいしてあったので楽しめました。宜しければ、頭の体操も兼ねて如何でしょうか。