ある日届いた一通の封書には、封をした一回り小さな封書と、一通の手紙が入っていた。手紙には、1から1000までの数字の内一つを思い浮かべろと書かれていた。思い浮かべた数字は658。男は同封されていたもう一通の封書を開封すると、そこには「お前が思い浮かべた数字は658だ」と記されていた。手紙の送り主に心当たりは無いものの、自分の全てを見抜かれていた男は、指示どおりに少額の小切手を指定された私書箱に送るのだが――。
アメリカのミステリ作家が描く、「デイヴ・ガーニー・シリーズ」の第一作。デイヴ・ガーニーとは第一線から退いた元刑事。有名な連続殺人事件を解決したことで名を馳せた刑事ですが、私生活では不幸な事故で子供を無くし、もう一つの子供ともギクシャクした関係が続いてます。そのガーニー元刑事の大学時代の友人が奇妙な手紙を受けとり、相談を受けたことから事件に巻き込まれていくのですが、後に殺人事件へと発展していきます。しかも殺人現場は雪密室。心に思い浮かべた数字を予言するトリックや雪密室の謎。そして遥か遠い地で起きた第二の事件との関連性の謎と言った具合に、不思議な事がこれでもかと広げられていきます。
文庫版で568頁もある長編ですが、最初の事件が起きるまでは少し冗長な気がします。ですが最初の殺人事件現場の状況がトリッキーな事から、読み手は一気に引き込まれていきます。またガーニー元刑事が有名人であるがゆえに、捜査に参加することを快く思わない人物が多数いて、そこもまた面白いです。ちなみに数字を予告するトリックや雪密室の謎に関しては、好みが分かれるかもしれませんが、私は十分楽しめました。シリーズは既に第六作まで出ているそうなので、引き続き読んでみようと思います。