警察小説と安楽椅子探偵を組み合わせた作品でしたが、泣けました。
捜査一課を退職した元刑事が、妻と二人で四国八十八カ所のお遍路の旅に出る。お遍路に出た理由は、過去の事件の被害者に対する贖罪と鎮魂。そして自分自身の心の整理の意味も秘めていた。その事件とは13年前に起きた幼女誘拐暴行殺人事件だった。物証も自供も無いまま、当時はまだ正確性に疑問の残るDNA鑑定のみの証拠で立件し犯人が確定したが、はたして彼は本当に犯人だったのか、冤罪の可能性は無かったのかと疑念を抱いたまま刑事を続け、そして退職したからだった。そしてお遍路に出た同じ頃に、東京で13年前の事件と酷似した事件が起きたことを知る。彼はお遍路の旅を続けながら、捜査本部にいる元部下と信頼する上司の二人から情報を得ながら、犯人に迫っていく――。
元刑事とは言え、電話で捜査内容を軽々しく離してくれるとは思えませんが、そんなことは置いといて! 個人的には面白かったです。たぶん主人公と年齢が近かったこともあり、考えや悩み、これからの生き方や過去の過ちに対する想いみたいな物すべてに共感出来、その心情が哀しかったです。歳のせいですが、けっこう泣けました。だからと言って、誰にでもお薦めするという一冊でもありませんので、その辺りは自己判断で。