小田原文学館で催されていた、坂口安吾展を観て来た。昨日が最終日だったので、開館と同時に入館した。坂口氏の作品で読んだことがあるのは『不連続殺人事件』だけで、『白痴』も『堕落論』も知ってはいたが未読でした。純文学の作家さんが、なぜ探偵小説を書こうと思ったのかが気になり、覗いて来ました。
文学館は小田原の高級住宅街の中にひっそりと隠れるように佇む、元宮内大臣田中光顕氏の別邸の建物を利用した物。だから建物を見るだけでも楽しいのです。
北側正面外観。昨日は朝から暑かったのですが、ここは涼しい風が吹いていました。
南側から見た建物。ルーフバルコニーには白い木製のパーゴラが設けられています。
ルーフバルコニーの様子。写真正面に見えるのは箱根の山。
そしてルーフバルコニーに設けられた外流しの吐水口。半漁人のようにも見えますが、たぶん魚でしょうね。
ルーフバルコニーから見下ろした庭の様子。左下の方にみえるのは、今は蓋が掛けられた井戸だと思います。坂口安吾展をひとしきり観賞した後に、敷地内にある離れの尾崎一雄氏の書斎が移築されているので、そこもついでに見学します。
目の前には、一足早い秋が道を阻みますが、それをひょいと跨いでその先にある北原白秋の白秋童謡館も見学しました。
こちらは1924年に建てられた入母屋の和風住宅。熱海の梅園内に建てられている中山晋平記念館と似た雰囲気を持つ、落ち着いた家でした。2階には堀炬燵を設けた和室があり、そこでしばし休憩させていただきました。エアコンなんてありませんが、大きく開いた窓から通る風が心地よく、思わず寝そうでした。そうそう! この建物の一階に三畳の和室があったのですが、いやーー、なんと心地良さそうな広さなのかと感激しました。部屋の中には少し大きめのテーブルが置かれていたのですが、この空間ならノートPCを広げて図面を描くも良し、寝転がって本を読むのも良し、誰かと一緒に酒を呑むにもちょうど良い広さ。三帖間と言う空間の心地良さを想像したら、それだけで楽しかったです。
近くには文学的に重要な建物がたくさんあるので、散策するのも楽しいことでしょう。ちなみに私、こういう場所に一人でプラプラすることが、何よりも好きで、何よりも癒されます。幸せな時間でした。あっ、そうそう! 坂口氏が『不連続殺人事件』を書いた切っ掛けを知ることは出来ませんでしたが、彼は子供時代から探偵小説を好み、クリスティや横溝正史を愛読していたことは分かりました。そしてトリックありきではなく、人ありきの謎が好きだったそうです。近いうちに『不連続殺人事件』を、読み返してみます。