レーダーに感知されない新素材を開発し、その素材を使用した小型飛行船<ジュエリーフィッシュ>が、極秘裏に開発される。その開発技術者たち6名は、長距離航行性能の試験飛行に出発する。軍も関係したそのテスト飛行は極秘に行われるのだが、飛行船は予定の航路を外れて、吹雪で荒れる雪山に不時着してしまう。しかも船内ではメンバーの一人が毒殺されるという事件が起きる。吹雪の雪山、脱出不可能な状況で乗組員が一人、また一人と殺されていく。第26回鮎川哲也賞受賞の「クローズド・サークルもの」。
帯にも『そして誰もいなくなった』『十角館の殺人』への挑戦でもある―と、書かれていたので楽しみに読んでみました。設定も今まで見たことも無い状況ですし、高い評価を得た作品であるという点は理解しました。ですが正直に言えば、私はクリスティーや綾辻さんの作品を、初めて読んだ時の衝撃の方が大きかったです。それはきっと私がミステリを読み過ぎて、少しスレた読者になっているせいでしょう。初めてクローズド・サークル物を読まれる方には衝撃だと思います。
私が少し気になったのは、飛行船のことを「真空気嚢船」と呼んでおり、その言葉が繰り返されたことに読み難さを感じてしまいました。確かに気球内に詰まっているのはヘリウムガスなどでは無く、真空化された気体であり、その安全性を記したかったのかもしれませんが、そこは飛行船でも良かったような気がします。また<ジェリーフィッシュ>とは<海月>、つまりクラゲのことを指していますが、飛行船と言えばヒンデンブルグやツェッペリンをイメージしてしまうので、その点も読みながら迷ったというか気が散ったところでした。
ふだん本を読む時には、人物のイメージをなんとなくでも想像して読むようにしています。その方が物語を楽しめるからですが、今回の登場人物、とくに技術研究者の人たちをイメージすることが難しかったです。私の想像力が落ちたのかもしれません。最近、老眼が進み、集中力も低下したせいもあり、夜、長い時間本を読むことが出来ません。読書を明るい時間にするようです。