東京から遠く離れたQ半島。その中でも秘境と呼ばれる軽磐岬の突端に、日影荘と呼ばれる古い平屋の建物が建っていた。日影荘は江戸時代末期、この地を支配していた日影一族の棟梁・日影秋水が隠居所として建てた建物だったが、ある事件をきっかけに「消人屋敷」と呼ばれるようになる。そして今、この人里離れた消人屋敷に、正体不明の覆面作家・黒崎冬華が住み執筆を続けていたのだが、そこに謎の招待状で呼び出された五人の関係者が集う。そして屋敷へと続く一本道が、おりからの雷雨で土砂崩れを起こし、関係者は閉じ込められてしまった。唯一の連絡手段だった電話線も何者かに切断され、そして事件が起こる――。嵐の山荘もの。
著者の深木さんは60歳を機に退職された元弁護士さんで、2010年にデビューされた方です。深木作品は勉強不足で未読だったのですが、本作の「屋敷」の書名に釣られて購入しました。で、結論から先に言えば、私にはちと合いませんでした。消人屋敷の名の如く、屋敷から人が消えるトリックに関しては、最初から「コレしかない」と、たぶん多くの方が分かると思うので、作品の肝はそこじゃないです。物語の起承転結の「結」の部分の驚愕と伏線の回収の妙だと思います。
ですがそこが私には合いませんでした。ことミステリに関してはリズムとスピードが命と思っているので、起承転結の結の部分、つまり下げの部分が長いと萎えちゃうんです。本当なら一番集中して読む必要のある謎解きの部分なのに、以上に饒舌な探偵がダラダラと説明し始めると、「ここは読まずに飛ばしても良いかな~」と、思ってしまうほどです。
作家さんにとっては、捻りに捻って苦心した驚愕のトリックを一生懸命に「聞いて聞いて」と、説明している所なので、とても大切な事は承知していますが、それでも長いのは苦手です。ましてそれが伏線の伏線の説明とか、伏線の余談に成ったらもうダメ。完全に冷めちゃいます。
本作に関して言えば「起承転」までのスピード感が快適だったので、「結」の部分が急に減速した感があって、余計にそう感じてしまいました。また別の作品を読んでみようと思います。
あっそうそう!本作には私の好きな間取り図が入っています。これはポイントが高かったです。