餅は餅屋へ

最近は本業では無い企業が、他業種へ参入し活躍している様子をよく目にします。たいていの場合は、異業種参入がエンドユーザー側にとっても便利になるケースが多く、喜ばれることが多いと思うのですが、なかにはそうでもないケースもあるようです。例えば物販店が専門外の品を売る場合には、たぶん違和感も覚えないし問題も生じ難いと思います。でも物販店が他の専門職を手掛けようと試みた場合、それも建築の様な個々の現場で、人が手作業で物を作る様な職種の場合には、それなりのスキルやノウハウは勿論のこと、正しい知識を身に着けた専門家を確保することは大前提として必要だと思います。と、ここまでが前置きの話し。

長く建築の世界に身を置いているが、私も知らない世界が、最近ではたくさんあることを痛感した。私が驚くぐらいなのだから、普通の人が知らずに話を真に受けても仕方が無いのでしょう。私から見たら「それ、騙されていませんか?」と感じてしまうことが、その業界では何の違和感も感じない、ごくごく普通の仕事の依頼・受注の仕方だったりするらしい。

勿論、工事の段取り然り、内容然りで、ごくごく普通の建築の世界で仕事をしていた者からすれば、それって法律違反じゃない? と、言う気がしなくもない。でも私もいい歳なので今さら口角に泡飛ばし、「建築とは何ぞや」なんて説教したり、聞く耳を持たない人を相手に正しい仕事の道筋を懇切丁寧に教えようなんてことは思わない。ただ、話を聞いていると、澱みたいなモヤモヤした何かが胃の中に重く沈んでいくだけ。

効率的なんて言葉を聞くと、確かにそれは大事なのだが、効率が良いことだけが全てに勝るとも思っていない。「当社ではこのやり方です」と言う言葉は、黄門様の印籠ではないと思うのだが、その決めゼリフだけで全てを押し切ろうとする輩が跋扈するのが、昨今の建築業界なのかもしれない。そんな騙しのテクニックみたいな物を勉強する暇があったら、一度、建設業法を全て熟読することをお薦めしたい。ま、馬の耳には何も聞こえないのだろうが。

建築の世界に限らず、餅は餅屋に頼むことが良い。さらに言えば「安物買いの銭失い」という言葉は、ある部分では間違っていないと思っている。ま、これも、ここだけの話ですが。