会社勤めをされている方が、趣味で不動産投資をされるケースが増えているのでしょうか? ここ一年の間に、数件のお問い合わせをいただきました。問い合わせ内容の一例をあげると、首都圏にお勤めの方が小田原で中古住宅を購入したので、そのリフォーム工事を依頼したいというもの。これだけ聞くとなんら違和感の無い話なのですが、実はその内容がどうにも無理筋なお話し。
築30年以上経った2階建て住宅で、ここ数年間は空き家だったとのこと。床は腐っているようで歩くとブカブカするし、水廻りはほぼ使い物にならない状況。だから床を補強した上でフローリングを張り直し、システムキッチン・洗面台・トイレ・浴室の全てを取り換えたいとのこと。予算は消費税込みで300万円。
現地を見るまでもなく、少し予算が厳しいのでは? と、尋ねると「他ではこのぐらいの予算でやって貰っているので出来る筈です」と、なんとも紋切り型の断定口調。それならその会社でやって貰えば良いのでは? しかもうち、設計事務所で工務店じゃないし……。
残念ながら当事務所ではご期待に添いかねると、お返事をさせていただきました。そしてこれに似たような問い合わせが、数件続いたのです。いま、この手の話が流行っているのでしょうか。
話の内容からどうやら皆さん、お勤め人のご様子。声の感じからしても比較的若い方かな? と、思いました。安く購入した中古住宅を安い値段でリフォームし、安い家賃で貸して、収益を上げようとお考えなのでしょう。でも利回りを含めて、本当に投資として成立しているのでしょうか? 何もかもが怪しい感じです。
そもそも家賃が安ければ借りてくれる人が居ると考えるのって、本当に正しいのでしょうか。とくに地方都市に行けば行くほど、築浅で安い家賃の賃貸なんていくらでもありますし、そこでさえも入居率は100%ではないと思います。都会のど真ん中ならともかく、縁もゆかりもない地方都市で、都会と同じ考え方が成立するとは思えないのですが。
それから低予算でのリフォームって、本当に大丈夫なのでしょうか。安かろう悪かろうになっていませんか? 必要な工事を適切な額で行うことが、所有者にも入居者あるいは利用者の利益につながると思います。 見える箇所だけをチャチャッと、やつけたような修繕をして、あとから困るなんてことにはしたくないですよね。
工事にご予算があるのは当然の話ですが、建物の状態や地域、施工内容や問題個所の状態、依頼する建設会社や大工さんとの関係性と言った具合に様々な条件に拠って費用は変わってくるものです。別の物件で出来たのだから、こっちの物件でも出来る筈と言う考え方は少し稚拙だと思いますし、それを初対面の専門家に断定して言い切るのって、少なくても協力を仰ぎたいという姿勢とは感じられません。
そして極め付けとして、そんな依頼をするのなら少なくとも設計事務所ではなく、工務店や建設会社に連絡するべきだと思います。設計事務所に依頼するということは、そこに必ず報酬が発生します。少ない予算で無理筋な工事を依頼したいと考えるなら、報酬が発生する設計事務所に依頼などせず、何もかもご自身で行い費用を少しでも節約することが必要です。設計事務所と工務店の役割の違いや費用の話も含めて、その辺りのことさえも理解されていない知識の方なのだと思ってしまいます。
不動産投資で利益を上げたいと考えるならば、正しい知識を持つ専門家のアドバイスを貰い、ご自身が被るリスクを低減させることが何よりも大切だと思います。またそんな専門家のアドバイスを受けているのであれば、リフォーム箇所のポイントや予算、依頼先への相談方法などに関しても正しいアドバイスを貰うべきです。ローリスク・ハイリターンを目論んでいるのかもしれませんが、そのために他者を小狡く利用してやろうなんてお考えは如何なものかと思います。最近、続いた相談内容だったので少し書いてみました。