神奈川、埼玉、東京と、全く別の場所で別の方法で起きた三件の殺人事件。それは一人の犯人が行った連続殺人事件だった。ワクチンと名乗る犯人から、大手新聞社の社会部記者宛てに、犯人しか知り得ない情報を書いた手紙が届く。手紙には新聞紙面に手紙を掲載すると共に、俺の犯行を言葉で止めてみろと書かれていた。もし拒否すれば第四の被害者が出る、その時の全責任は新聞社にあると宣言する内容だった。かくして新聞紙面を使った劇場型犯罪に対する報道の仕方に揺らぎながらも、犯人との対峙が紙面上で始まった。第27回鮎川哲也賞優秀賞受賞作品―
67年にアメリカで起きた「ゾディアック事件」を、思い出す方は多いと思います。劇場型犯罪のスタイルは似ていますが、こちらは論理的な思考と言葉で対決しています。また難解な暗号文なども出て来ません。比較的早い段階で犯人への目星が付いてしまう方も居るかもしれませんが、それでも記者と犯人の対峙に引き込まれてしまいます、また事件の背景には、新聞と言うオールド・メディア(私はそうは思っていませんよ)の発行部数の低下や広告収入の減収があります。つまり発行部数を伸ばすために犯人の言う通りに紙面を割くのか、書かないという社会正義は無いのかと、社内でも意見が割れるあたりの描写は生々しくて良いです。
ドラマ化されることも決まっているようなので(もう始まってますか?)、ドラマを見てから読むか、読んでから見るかはあなた次第です。