コロナ禍の影響で、出社せずに在宅での仕事が推奨された頃から、地方都市へ移住を希望される方が増えて来ました。ここ小田原をはじめとし、東海道線沿線の真鶴や湯河原、熱海と言った海が見える土地へ移住を希望される方は多いようです。また富士山が綺麗に見える山北町や開成町への移住希望者も増えていると聞きます。そのせいか手頃な住宅用地が品薄となり、場所によってはプチ・バブル状態で不動産屋さんは大忙しだそうです。
そんな中、建築条件付きの土地を求められる方から、工事の監理だけを頼めないでしょうかという相談をいただきました。首都圏にお住まいで、小田原に家を建てたいと考えられている方が土地を探していたところ、建物を建てることを条件にした建築条件付き住宅なら見付かるのですが、土地だけを購入して建物は設計事務所+建設会社に依頼することが出来そうもない。仕方なく建築条件付きの土地を求めることになったのですが、遠い場所での家造りだからこそ、施主に代わってシッカリと現場を見て欲しい―と、言う御相談です。すごく正しい現実的な考え方だと思います。
別に地域のビルダーさんやHMに、不信感を持っているわけではありません。ただ工事現場の近くに住んでいない分だけ、不安なんだと思います。その不安を解消するために、セカンド・オピニオン的な感覚で、客観的に工事の進捗や内容を見てくれる人を、サポーターとして頼みたいと言うことなのでしょう。
お気持ちは凄く良く分かりますので、二つ返事でお引き受けしたいのですが、問題が一つあります。それはそのビルダーなりHMなり不動産会社なりの了承が必要だということです。本来、施主が別の設計者にセカンド・オピニオンを依頼するわけですから、ビルダーの了解など要らないと思うのですが、ビルダーだって人の子ですから、「弊社の工事が信用できないと言うのですか?」みたいな感じにならないとも言えません。それにいくら施主の依頼だからと言っても、ビルダーの責任において管理している工事現場内に、部外者の人間が勝手に立ち入ることは許されないからです。万が一現場内で怪我でもしたら労災案件ですし、火災や事故などが起きた場合の責任の所在が問われてしまいますからね。つまりそれら諸々の理由から、ビルダーの了解は絶対に必要となるのです。
ビルダーにしてみれば面倒な話なので、簡単に了解してくれる会社は少ないと思います。なんせ部外者を入れたいという話なのですから、なにかと細かい所に文句を言われそうで、厄介であることこの上ない―――なんて思われているに違いありません。でも少し視点を変えてみては、どうだろうと思います。例えばビルダーも良い家を造ろうとしている。施主も良い家を造って貰いたいと考えている。その為に依頼したセカンド・オピニオン監理者は、けしてビルダーの敵ではなく、共に良い家の完成を目指す協力者だと考えてみることは出来ないものでしょうか。確かに普段の工事では介在しない第三者の監理者が存在することは面倒なのかもしれませんが、それを面倒な厄介者と捉えずに、「弊社の工事は非の打ち所がないでしょ」と、第三者に客観的な視点で見て貰えると考えることは難しいのでしょうか。敵対関係ではなく、普段と違う目が入ることで、ひょっとすると違うことが見えるかもしれませんし、あるいは自分たちの質の高さを見せ付ける場にもなるかもしれません。
ま、その判断はビルダーさん次第なので、私があれこれ言うことは出来ませんけどね。ただ一つ言えるのは、監理を第三者に頼みたいとまで考える施主は、家を建てることに真摯に向き合っている人だと思います。条件や状況は人それぞれ違いますが、家を建てることを妥協して、適当に考えている方に比べたら、なんとか協力したいと思わせるご相談者様です。御相談をいただいたこちらとすれば報酬の問題でもなければ、条件や内容の問題でもありません。ようは家造りに対する施主の熱量の問題で、高い熱量をお持ちの方が、なんとかして欲しいと熱く語られたら、「しょうがねぇなー」と言いながら一肌脱ぐってもんです。(香川生まれの江戸っ子ですから) 建築が好きな設計屋さんや建設会社さんて、そんなもんです。熱量の高い施主が熱く語る家への想い、けっこう好きなのですよ。
コメント
本当はセカンド・オピニオンを確かめたいのだけれども、(もしかしたら今までのお医者さんとの付き合いがこじれ関係が悪くなるんじゃないか)と躊躇してしまう方がいますが、それと似ていますね。日本人的な繊細さです。こじれたらこじれたでそれまでの縁だったと思えばいいと思うのですが、なるべくトラブルを避けたいのも人情です。
しかし自分の住まう大事なおうちですから、ちゃんと見護りたいです。首尾よく滞りなくいきますようにと期待しています。
セカンド・オピニオン、逆の立場だったらと考えると、やはり少しモヤモヤするのかもしれませんね(笑) 立場が変われば考えることも感じることも違うわけですから、その点を解消できるような関係性の上で、依頼者に協力できると良いのですが。