専門家を建物計画の相談をするためと現地へ呼び出し、計画が実現可能か否かを確認すべく諸官庁との協議を行わせ、その結果として対応できる方法をいくつか提案し、その作業に関する業務の見積書を提出する。だが諸官庁との打合せ結果が、自分の意図した内容にはならないことが判明すると、その調査結果に納得せず、「作業を中止します」でもなければ「業務はここで終わります」でもなく、黙ってフェードアウトし、それが通用すると思っている困った御仁の話。世間を知らないお若い方でも、今日日そんな対応はしないと思うが、齢も還暦に近いような方が、そんな対応がまかり通ると思っているのだから呆れます。
そもそも違反建築物だった建物を購入し、その建物をさらに違法に改造したダブルの違反建築物を、大掛かりな是正工事を施すことなく、不特定多数が利用する特殊建築物として合法的に利用したいと言うご希望自体が無理な話。それでも関連する諸官庁を廻り、打ち合わせをした結果、やっぱりダメですよという結果だったのだが、どうやらそれが気に入らない。
調査する前に見せて欲しいと、お願いしていた資料を見せていただいたのも、すべての諸官庁と打ち合わせを終えた後。その書類を先に見せて貰っていれば、その時点で無理ですよと、お話しすることも出来たのに全てが後出し。それでも「こんな感じならば、ご希望に近い形で利用できます」と提案したのだが、今度はその内容で良いから、こちらが提示した業務報酬の見積もりに対して、その半分の額でやって欲しい言い出す始末。一体何の根拠があって、半分に値切ろうとするのか意味が分からない。
さすがにそれは無理ですが、いくつかの項目を別途作業として切り離し、ご自分で対処できる事務手続きなどは御自身で対処していただくことで、なんとか対応しますよと言ったのだが、どうやらそれも気に入らなかったようで、その結果のフェード・アウト。何度連絡しても繋がらないし、メールでさえも返信されない。いい歳した大人が、そんな対応するのかと怒りを通り越して、ただただ驚くばかり。
仕事はしてほしいが金は出したくない。それなら自分で出来ることは自分でやれば良いと思うのだが、自分で動くことも嫌ときてる。そんな考え方で、よく今までやって来れたものだと呆れるのだが、そういう生き方をしてきた人は、きっとこの先も変わることは無いでしょう。
で、本当に大切な話はここから。このご相談者さん、当事務所に相談する前から、一定の営業を行っていたと話されていたし、相談中も営業を続けていた気配あり。つまり必要な許可を取らない違法営業を行っているご様子。でもそれはその相談者さん(店舗の営業者)を信頼して、店を利用してくれているお客様に対して、嘘を付き裏切っていると言うことになります。飲食店なら食の安全を担保し、宿泊業なら泊まること=命を預けていただくことを蔑ろにしているのです。
取るべき許可を取っていないということは、守るべき基準や内容を知らないと言うことでもあり、利用者に対する安全・衛生・技術の知識や情報も無いまま、騙す形で営業をしていると言うこと。万が一、事故でも起きた際には、ご自身が罪に問われることよりも、お客様に対して大きな被害を与えかねないと言うことを理解していないと言うことです。
どんなに立派な話をされていても、こうした違法な営業を続けている限り、その方の唱える高尚なお話は、ただのお題目でしかありません。当事務所への依頼がないのなら、せめて他の専門家に依頼して必要な許可を取り、守るべき基準や設えだけは、どうか行って欲しいと願っています。
コメント
何度読み返してもため息が出ます。本当にこんな無礼な恥知らずの方がいらっしゃるのか…飲食店の食い逃げと同じ、やっていただいた対価を払わずにフェードアウトなんて犯罪です。周りに迷惑をかけてお友だちなくしますね。
ところで以前相談を聞いていただいた友人のことです。最終決定は彼女自身の判断ですが、同じ建築士さんでまだ続いています。この間もまた違う設計図を見せてくれまだ不満げでしたが、ここまで引っ張ってきたのでGOということでしょう。
彼女自身マンションを所有していて土地は親の所有です。ミステリー的に考えると、彼女自身がどのような家にしたいという確固した考えと必然性がなかったのでは?…建築士さんは思いを形にしてくれるのが仕事ですから、建築士さんだけの問題ではなかったのかもしれません。
おそらく家は建つと思いますが、(やっぱりこんな家じゃなかったんだよな)と思いながら暮らすのかな?…私は大げさかもしれませんが、家と言うものは建築士さんに自分の夢を形として実現してもらい、手に手をとって協力しあい、完成の暁にはその作品の完成を心から喜び合えた存在です。暮らすことで家を愛し、建築士さんとはその後もお友だち。
その節はご相談に乗っていただいてありがとうございました。経過でした。ニュアンス的なあらたな建築ミステリーがかけそうです。
程度の差こそありますが、こうした常識から少し外れた対応を取られる方は、意外と少なくありません。そんな変な人なら初めに分かりそうなものと思われるかもしれませんが、実はそうでも無いのです。ネットでお手軽に専門家にアクセスできるようになり、その手軽さからどんな非礼を働いても、相手の痛みを想像できなくなっているのでしょう。残念なことです。