『第八の探偵』アレックス・パヴェージ著

『ホワイトの殺人事件集』と、名付けられた七作品からなる短編集を刊行した後に、作家としての活動を止めたグラント・マカリスター。今はひっそりと隠れるように、小島に移り住んでいた。そこに復刊を持ち掛けるため訪れた編集者の女性ジュリア・ハート。短編にはミステリの数学的定義が盛り込まれており、二人はその解釈と考え方を話し合うのだが、作品を読み進めるごとに何かが少しずつずれていく。作中作七作品が盛り込まれた難解で複雑な構成になったミステリ。

作中作と、それを読み終えた二人の会話が順番に繰り広げられます。かなり難解といえる構成で、入れ子構造のようです。またそれぞれの短編には、ミステリ小説における数学的定義や解釈が盛り込まれており、それらに関しても読後に説明が為されています。が、それら七作品を読み終えた後から……。と、いう感じなので、気になる方はお読みください。

たぶん感想が分かれる作品だと思います。とにかく難解なので、作中作に関する読み込みというか集中力が必要になります。そうでないと後半、辛いです。また千街晶之氏の「あとがき」には、1980年後期から1990年代における「新本格」を想起させる作品と書かれていますが、たしかにそんな印象もあります。人物名や地名などが日本名に変えられていたら、作中作品は日本の作品だと勘違いされる方も居るでしょう。

ですが捏ね繰り回していることも事実なので、単純明快なミステリが好きな方にとっては嫌われるかもしれません。クリスティに対する敬愛やオマージュ的要素が随所に見られます。「ノックスの十戒」や「ヴァン・ダインの二十則」ほどではありませんが、ミステリ小説における数学的理論は面白かったです。できれば一覧にまとめる形で整理してもらえたら、もっと理解度が高まったと思います。全体的には若干、読み難い作品でしたが面白かったです。最近、本の話を書いていなかったので、思い出したように書いてみました。

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