ヤーコブとヴィルヘルムのグリム兄弟が描いた童話短編集。全30話以上の短編が綴られており、なかでも『ブレーメンの音楽師』は、有名。夏休みの課題図書として購入した一冊でしたが、今頃読み終えました。
グリム童話集って、けっこう好きです。登場する主人公が悪魔・蛇・死神・魔女・ならず者と、それはそれは童話とは思えないメンバーがズラリと並んでいます。そして話が中途半端に、めでたしめでたしとは終わらないところが好きです。悪い奴はしっかりと罰を受け、ズルをした者はこれでもか!と、懲らしめられます。悪い魔女を騙してハッピーエンドなんてことには、絶対になりません。悪い魔女との約束でも、一度交わした約束を守らなければ、それなりの重い罰を受けます。その厳しい現実は、寝る前に子供に読んで聞かせると、夜泣きするんじゃないかと思うほどです。ですが妙にメルヘンチックな童話より、面白いです。童話として読むと難がありますが、倫理観を学ぶ参考書として読めば、これほど分かりやすい一冊も少ないでしょう。
『池に棲む水の魔女』なんて、約束の怖さと大切さを学ぶには最良の作品と言えます。貧しい暮らしをする男が、水の魔女と約束を交わします。それは今、家で生まれたものを魔女に差しだせば、男を裕福にしてやると言うものでした。男は犬か猫の仔でも生まれたに違いないと魔女と約束を交わしますが、生まれたのは男の子供だったのです。男は裕福になりますが息子を魔女に差し出すわけにはいかず、約束を守りませんでした。息子にも池には近付くなと厳しく言いつけます。池から出ることの出来ない魔女は、男が約束を守らないことに腹を立てますが、成す術がありませんでした。そんなある日、息子はうっかり池に近付いてしまいます。
なんて話ですが、別の童話なら水の魔女を出し抜いて、男は家族と幸せに暮らしました。メデタシメデタシとなるのでしょうが、そんなオチにはなりません。たまにはこういう本を読むのも良い物だと思いました。