『瑕疵借り-奇妙な戸建て-』松岡圭祐 著

心理的瑕疵物件に住むことで、瑕疵を軽減することを生業とする「瑕疵借り」の藤原。依頼を受けて住みはじめたマンションに、犬を探している秋枝という男が訪ねて来る。この部屋の住人が自分の犬を連れ去ったらしいという噂を聞き訪ねて来たのだが、その男は既に殺されていた。しかも室内には犬がいた形跡は無かった。藤原はお節介から犬の消息を突き止めるのだが、このことが藤原と秋枝を結び付けてしまい、次の瑕疵物件へと繋がっていくことになる―

建物の間取り図面が何点か描かれています。また建物の造り方や工法の特徴、時代によって変わってきた耐震性能の確保技術や、バブル期のような繁忙期に、いかに家の造り方が杜撰だったかと言う話も、物語の参考資料として描かれています。ま、たぶんに演出的な記述もありますが、ひょっとするとそんな杜撰な……というか、テキトーな仕事をする建設会社もあったのかもしれません。それらは事件の本筋やガジェットとは違いますが、雰囲気を盛り上げるためには一役買っています。

心理的瑕疵=気持ちの悪い建物、ホラー的な雰囲気を感じるでしょ? というふうに描かれているような気がしましたが、そこは過剰に演出しない方が好みです。なんせ家に纏わる仕事をしているので、怖い雰囲気を描かれてしまうと、中古住宅などの建物調査に行く時に思い出してしまい、怖くなってしまうからです。

肝心な物語ですが、読みやすいので、ややホラー寄りのミステリ、あるいは家に関係する謎解きが好きな人にはお薦めです。個人的には表紙の「瑕疵」の文字が、やや滲んでいる点が好きです。