『刑事の枷』堂場瞬一 著

川崎中央署の新米刑事・村上は、管内の公園で発生した人質事件をきっかけに、ベテラン刑事・影山が、単独で捜査を続けている10年前の事件の捜査を手伝わされることになる。回りからは「影山には関わるな」と、釘を刺されるが、捜査を手伝ううちに村山自身も、その事件に興味を持ち始める。そして新たな殺人事件が発生、その事件は10年前の事件と繋がっていく。

警察小説の面白い点は、警察内部の組織論と刑事個人の思想や私怨、そしてそれらを含む熱い思いが物語を推し進めていく力になっていることだと思う。この作品では10年前の事件に拘る村上が、規律を重んじる警察という組織において、誰からも咎められることなく、勝手に動き回っている不自然さと、その動機にある。だから村上の拘りが、ずっと引っ掛かるのだが、それは最後になって明かされることになる。理由が少し弱いような気もしたが、その点を差し引いても物語としては面白かった。