漫画家・藤田和日郎氏のアシスタントになると、なぜかみんな連載を勝ち取り独立していく。その秘密に迫る、藤田氏の育成術! ってコピーに惹かれて手に取りましたが、いや本当に面白かった。
藤田氏のアシスタントになった新人が、漫画雑誌の編集者に短編漫画のネーム(下書き)を持ち込み、なんとか掲載して貰おうとするのだが、そのたびにダメ出しをされ肩を落として戻って来る。その際の遣り取りを藤田氏が聞き、時に叱咤し、時に激励しとアドバイスをする。新人君は藤田氏のアシスタントをこなしながら、また新しいネームを書き編集さんに持ち込む。と言う話が何ターンか続き、最後には編集さんに認められて連載を勝ち取り、藤田氏の元から独り立ちしていくまでを読み物形式で書いています。
漫画の描き方には一切触れていません。物語の起承転結の考え方や、どうすれば少年漫画に掲載して貰えるのか、そのためのキャラは、物語は、あるいは新人君はどんな漫画を描きたいの? と、言ったモノ作りに携わる人全般に対して、本質的な部分を思い出させてくれます。
たぶん口話を文章にしている気がするので、違和感のある記述もありますが、その分テンポよく読むことが出来て、なおかつ本質をバシバシ突いてくるので、読んでいて楽しいかった。
藤田氏の描かれた漫画『うしおととら』は、私が好きな漫画ベスト10に入る名作中の名作なので、その作品が世に出るまでの苦労談も垣間見えて、余計に楽しかったです。読んで良かったと思える、良い本でした。