寒村に続く一本道に、男の死体が転がされていた。人通りのない早朝に見付けられた男の死体には首が無かった。鋭利な刃物で切り落とされたような切断面にも関わらず、周囲には血痕も少なく、のどかな景色の中に放置された首のない死体が、恐怖を感じさせていた。
衝撃的な冒頭から始まる本作品は、とんでもなく奥深い事件を感じさせています。頁数のある作品ながらも吸引力が高く、グイグイと引き込まれる展開で読み応えがありました。登場人物の誰が善で、誰が悪かが分かりません。どちらの心も持ち合わせている人物ばかりなので、その辺りも作品に深みを与えています。
誉田さんと言えば警察小説の第一人者であり、描かれる作品にはバイオレンスな作品も多く、本作でもエグいシーンが満載。事件の中心には奇怪な新興宗教団体「サダイの家」が存在しており、得体の知れない物への恐れとショッキングな事件が相まって怖さ満載です。そもそも表紙の絵が強烈ですよね。
姫川玲子シリーズの最新刊は未読なので、近いうちに読みましょう。