小田原と聞いてすぐに思い浮かぶ物といえば、蒲鉾と梅干と小田原城あたりでしょうか。曽我の梅林とか曽我の五郎・十郎兄弟の仇討などと答える人は、地元の一部の人ぐらいでしょう。まして二宮金次郎と答える人は、もう完全に小田原マニアの人です。最近では早川レモンとか小田原おでんもありますが、建築物として思い浮かぶのは小田原城ぐらいですね。
でも小田原には、国の有形文化財に指定されている建築物も、たくさんあります。例えば小田原文学館やだるま食堂、清閑亭や松永記念館の老欅荘なんていう建物も有名です。
なかでも正月の箱根駅伝の第五区中継所の傍に建つ「旧内野醤油店」は、住宅である主屋をはじめ計八つの建物が指定されている大きな建築群になります。その旧内野醤油店の建物を解体して、新たな名所を生み出すべく新築する計画が進行中なのですが、これが実に残念な方向で進み、それ故に文化財の専門家が計画の中止を訴え、現在、解体途中の状態で工事が止まっています。
この計画、なにが残念かと言うと、まずは文化財に詳しい専門家の意見を全く聞かず、市が独断で進めてしまったことでしょう。さらに言えば、今から120年以上も前に建つ建物を解体するため、国の重要有形文化財の指定から外されることです。勿論、そのことを告知せずに、なんとなく始まった解体工事でしたが、ひょんなことからバレてしまい、有識者が騒ぎ出して工事を中止したのが昨年の年末。
さて、これどうするのでしょうか? 解体工事の途中で止めると、建物はどんどん劣化します。元の状態に修復するにしても、解体を続けていくにしても、とにかく一番まずいのは工事の途中で放置してしまうことです。
本当に凄く偉い大先生方が知恵出し合って始めた計画だと思いますが、とてつもなく阿呆な方々ですね、と言われても仕方のない状況に思えます。
闇雲に古い建物だから残せばいいとは言いませんが、残すなら残す保全計画と有効活用の指針が必要でしょうし、解体して新しい観光施設を建てるならば、市民を含めてみんなが喜んでくれるような建物造りを目指すべきではないでしょうか。
箱物行政って昭和じゃないんだから、造ることよりも維持していくことの費用や管理方法を、十分に検討しないで進めてしまうと、地方都市の貧弱な財政なんて、あっという間に枯渇していくことが、偉い方々はまだ分かっていらっしゃらないようで、ちょっと笑ってしまいます。
小田原の国登録文化財、解体工事がストップ 専門家は市批判「許されない」
どんな優れた建物でも、いずれは寿命が尽きると思います。それならば正しくその顛末を見届けたいと思うし、その最後の姿を見守りたいと思います。人も建築も愛情を以って、最後の時を見送ることは、その建物や人に対する敬意だと思っています。
明日、母の四十九日の法要があり、事務所を留守にしますが、ご容赦ください。