高校3年になった夕士は、就職希望から大学に進みたいと進路を変える。
夏期講習や、親友長谷の厳しい個人指導を受ける夏休みのある日のこと。久しぶりの息抜きへと出掛けた街で、教師の千晶やクラスメート数人に偶然出会う。彼らと一緒にアンティーク・ジュエリー展へと出掛けるのだが、そこで思わぬ事件に巻き込まれてしまう。絶体絶命のピンチに、夕士は「あの力」を使うことが出来るのか!
このシリーズを読んでいると、本当に安心する。
たぶん登場人物の優しさや柔らかさの成せる業なのかもしれない。
天涯孤独と自分の身を哀れみ、自分以外の人と距離を置いた有士の、たった一人の理解者であり親友でもある長谷。偶然であった、摩訶不思議なアパートの住人たち。少しずつ心を開けるようになった有士に出来た高校の友人。そして不思議な魅力を持つ教師の千晶。
なにより、魔道書の案内人フールの立ち居地が良い。ご主人様と崇めつつも、媚びることなく、寄り添うフールの存在は、有士に自信と自覚を与えているように見えるから。
シリーズは、あと二巻で終わるらしい。
早く読みたいような、読みたくないような複雑な気分にさせる読後。