ばらしたい・・・・・

JUGEMテーマ:日記・一般

ぼんやりと光る裸電球の下で、男達は深刻そうな顔を寄せ合っていた。
年長だと思われる男が、もう一人の男の顔を真っ直ぐ見つめて聞く。
「ばらせるか?」
聞かれた背の高い男は、顔を背け、消え入るような小声で返事をする。
「いえ、今はまだ準備が整いません」
小さく舌打ちをした年長の男は、睨んだまま怒鳴りつけた。
「ばかやろう、ここでばらしておかねぇと後々面倒な事になる。何が何でもやっちまうんだ!」
怒鳴られた男の背が、少しだけ縮んだように見える。
「へい、分かりました。それじゃあ早速、腕の立つ奴らに連絡をとってみます」
「しっかりばらすんだぞ!」
男達は灯りを消し、闇の中へと消えて行った。
冬の工事現場は、作業が終わるのが早いのだった。
と言う事で、この時期に建物の外部足場が掛かったままになっていると、とっても不安なのだ。たとえば年末年始の長い休みの間に足場が掛けられたままだと、風や雨で煽られやしまいか、子供が登ったりして、事故などがおきやしまいかと、何かと心配の種になる。だから作業の状況的に、ばらせるものならばらしてしまい、スッキリした形で休みに入りたいと考える。今、工事中の二件の現場は、どちらもばらせるかどうかの瀬戸際なので、現場ではみんなピリピリしている・・・と言う話。
ちなみに「ばらす」は「解体する」の意味で、「殺す」と言う意味ではない。
また現場で「ころす」と言うと「消してしまう事、無くしてしまう事」を意味する。もっと言えば、「埋める」・「切る」・「やつける」などは日常的に使う言葉なので、建設用語を知らないミス好きの施主の場合、現場に来ると「キャッキャッ!」と喜ばれる事は間違いない(笑)